税法理論の暗記方法(主に相続税法初学者向け)

新年度の初講義も終わりなんとなくほっとしてる今日この頃です。

さて、初学者を対象にした税法の理論の暗記方法を簡単にですが紹介していきます。
(勉強は最初に良い習慣をつけるのが肝心だと思います。最初に良い習慣をつけられるとそれが自然と継続し勉強をする癖がつきますよ。頑張って!)

目次

[1] まずは相続税法を楽しみましょう

好きこそものの上手なれって言葉がありますよね。

相続税法を受講するということはこの科目に興味があり、また、ご自身の想定する将来の展望があるため選択されたのだと思います。

色々と小難し言葉があるのであれなんですが、くじけそうになったら相続税法を受講しようと思った一番最初の気持ち(野望)を思い出すなどして、相続税法の受講及び勉強を楽しめるように色々妄想をしてこの科目を好きになって下さい。

ちなみに私が相続税法を受講した最初の理由は、税法受講前に財務諸表論を受講していて、時価という言葉が頻繁に出てきて、じゃあ税法上の時価ってなんだろ?って思ったことがはじまりです。

[2] 税法理論の各規定の全体像をつかみましょう

各規定(1-1など)の[1]、[2]などの各ブロックの個々の取り扱いを暗記する前に、[1]から最後の[]までのタイトルを確認し、各規定(1-1など)の全体像を把握しましょう。

暗記する場合にはまず[1]から暗記し、それが終わると[2]を暗記し・・・と進めていく方がほとんどかと思います。

このように進めるのは当然なのですがまずは暗記をする前に各規定の[1]~最後の[]までのタイトルを確認し、その全体像を把握しましょう。

木を見て森を見ずではありませんが、日ごろから規定の全体像を把握していないと本試験で解答が漏れる場合があります。

これって悔やんでも悔やみきれない合否を分けるミスですよね。

そのミスが生まれる理由は、規定の全体像をつかまずにやみくもに個々の税法条文を暗記しているからだと思います。

日ごろから全体像をつかみ、本試験では漏れのないようにしましょう。

[3] 覚えにくいかっこ書きは最初は飛ばして覚える

ものにもよりますが、覚えにくいと感じたかっこ書き(特に文章の間に存在する長いもの)は、まずは飛ばして暗記しましょう。
私は受験生時代に理論暗記の下準備としてかっこ書きは必ず二色目のマーカーでマークをして、飛ばすかっこ書き部分を分かりやすくしてから暗記をしていました。(かっこ書きの中にさらにかっこ書きが出てくるときにはその部分は三色目でマークしていました。)

まずは各理論の大筋を掴むのが大事だと思います。

なお、当然のことですが本文部分の暗記がある程度できてきたら、かっこ書きも含めて暗記をしましょう。

[4] 条文を区切り分割して覚える・条文の構造を意識する

⑴ 条文を区切り分割して暗記する

  理論テキストにおける各規定の[1]が、その規定の主たる内容を定めていることが多いと思います。
  ただ、この[1]の文章が長く、暗記するのに苦労している方もいるのではないかと思います。(税法は国が国民の財産を強制的に国に移すことの根拠となる法律なので、様々なケースを想定し抜け穴がないように非常にこと細かく定められているので文章が長くなる傾向があります…)
  文章が長い場合の対処方法の一つとして、丁度よいところに/(斜線)を入れ、文章を区切り分割しながら覚えるのが良いかと思います。

例 5-1[1]相続時精算課税の選択、⑴適用要件、➀原則の場合
  贈与により財産を取得した者がその贈与をした者の直系卑属である推定相続人受贈者(その年1月1日において18歳以上であるものに限る。)であり、
  かつ、その贈与をした者贈与者が同日において60歳以上の者である場合には、
  その贈与により財産を取得した者は、
  その贈与に係る財産について、
  相続時精算課税の規定の適用を受けることができる。

区切りを入れる箇所は人それぞれなのでご自身がしっくりくるところに斜線を入れましょう。
また、状況に応じて文章にメモ書きを加え、贈与者や受贈者などの用語との対応関係がすぐに気付けるようにカスタマイズしていきましょう。

⑵ 条文の文章構造を意識して暗記する(適用要件等が定められている条文)

   税理士試験を受験する上で暗記すべき条文の大多数は、適用要件を定めた規定だと思います。
   この適用要件を定めた規定の文章は長く回りくどいため暗記に苦労をする方が多いと思います。
   そんなときには文章構造を意識して暗記をすると少しは楽になるのではないでしょうか?  
   適用要件を定めた規定の文章構造は大体
   ➀ 規定が適用される条件(『~場合『~ときまでの文)
   ② 対象者(主語)
   ➂ 目的となるもの、適用したことによる効果、具体的な取り扱い等
   ④ 結論
   となります。(順番は入れ替わることもありますがそこは柔軟に対応しましょう)
   例えば5-1[1]相続時精算課税の選択、⑴適用要件、➀原則の場合を例にすると

➀ 規定が適用される条件(『~場合まで『~ときまでの文)
  贈与により財産を取得した者がその贈与をした者の直系卑属である推定相続人(その年1月1日において18歳以上であるものに限る。)であり、かつ、その贈与をした者が同日において60歳以上の者である場合には

② 対象者(主語)
  その贈与により財産を取得した者は、

➂ 目的となるもの、適用したことによる効果、具体的な取り扱い等
  その贈与に係る財産について、

④ 結論
  相続時精算課税の規定の適用を受けることができる。


いかがでしょうか?
適用要件が定められている条文を分解すると大体このようになります。
すべての条文がこの文章構造というわけではないのですが、私は受験生時代に➀~④を意識して暗記していました。
文章をやみくもに読むよりも暗記がしやすかった記憶があります。
ぜひ試してみてください。

⑶ 暗記方法

私の具体的な暗記方法は次のとおりとなります。

➀ 理論テキストの区切り分割をした箇所を読む
(前例⑴とすると、『贈与により財産を取得した者がその贈与をした者の直系卑属である推定相続人(その年1月1日において18歳以上であるものに限る。)であり、/』までになります。)
② すぐに目を閉じその読んだ箇所を唱えるまたは黙読する
➂ ②で言葉に詰まれば分割した同じ箇所を読み言葉に詰まらなくなるまで➀~②を繰り返す。(言葉に詰まらなくなったら次の分割した箇所でまた➀~➂を行い、すべてを暗記するまでこれを繰り返す。)


このような方法で私は理論の暗記をしていました。
なお、暗記初日では⑴で区切り分割した箇所を基準として暗記をしますが、2日目くらいからは分割した箇所を徐々に統合し、長い文章を暗記することになります。

また、次の講義までには、分割箇所を無、または、一つ程度で暗記ができているとミニテストも満点が取れると思いますのでその状態を目標としてください。(なかなか大変ですが…)

[5] 一つのブロック([1]など)の暗記に時間をかけすぎない

税法理論は難解なので、最初の頃は1ブロック([1]など)に1時間かけても正確に暗記ができない場合がありますが、一つのブロックに時間をかけすぎて他の部分の暗記ができないのは学習のバランスが悪いです。

したがって、覚えられなければ覚えられないで割り切って次のブロックに進みましょう。(ものにもよりますが一つのブロックにかける時間は15分~20分くらいが限度

正直きりがないので。

何回も繰り返し読んでいればそのうち暗記できますよ。(回転数が重要かと思います。)

一つのブロックにこだわりすぎて他の部分がおろそかにならないようにしましょう。

[6] 理論の暗記は毎日しましょう

理サブは受験生の精神安定剤

理サブを毎日出先に持って行き暗記をして下さい。

平日は30分から1時間、場所はどこでも良いので読む時間を作って下さい。(希には呑み会帰りの電車で酔っぱらいながらでも良し)

・私の受験生時代の平日の暗記

ちなみに私は受験生時代平日は通勤の電車で黙読をして暗記していましたよ。(行きの電車30分・帰りの電車30分)

なお、このご時世在宅勤務で通勤時間がない日もあるかと思いますが、これは勉強をするチャンスだと思います。(家で集中して暗記ができない方は、暗記作業を行う場所を決めて自分自身の暗記スイッチを入れるのが良いと思います。私の受験生時代の理論暗記をする場所は風呂でした。どこでもよいのですがその場所を早めに決めてスイッチが入るようにしてください。普通に集中できる人は無視してOK)

在宅勤務の日はいつもより30分くらい早く起きて理論の暗記、昼休みもご飯を食べたら勤務時間まで少し時間があると思うのでその時間などで暗記しましょう。

ほかにも在宅勤務により、自由になる時間は増えていると思います。勉強できるチャンスなので隙間時間を見つけて暗記をしましょう。

また、家で暗記をする場合には音読をして暗記をしても良いと思います。音読、黙読のどちらが良いかは人それぞれなので色々試して自分に合う方法を見つけてください。

熱い気持ちを持っている今のうちに毎日理論暗記をする癖をつけましょう。

・私の受験生時代の休日の暗記

休日は家などで合計2~4時間くらい暗記をしていました。

また、どうしても覚えられない理論は書いて覚えていました。(黙読、音読に比べて時間がかかるので最後の手段の位置づけ。)

不思議なことに書くと暗記できるんですよね。

なお、暗記の作業をしていて集中が切れたら5~10分くらい休憩を必ず入れていました。

暗記は集中が大事です。

長時間の暗記のときには休憩を必ず入れましょう。

[7] 暗記をする場所(空間)を決める

理論の暗記は合格するために必要と分かっていながらも、なかなかやる気が起きないときもあります。

その対策として暗記をする場所を決めて、その場所では必ず暗記を行うというルールを自分の中に作りましょう。(暗記ルーティンの確立)

私の場合、暗記をする場所は、電車・ファミレス・ファストフード店・風呂・勉強机と決めていました。

どんなことがあっても一人でその場所に行ったら理論の暗記をしていました。

特に風呂での暗記は換気扇の音が心地よくはかどった記憶があります。(理サブが全体的にしわしわになり、本試験直前には表紙が破れボロボロにもなりますが…)

なお、その決めた場所で暗記をしたら合格する確率が上がるとし、もし仮に暗記をしなかったら、不合格の確率が上がるというルールを作り自分自身を律していました。

[8] テレビ・YouTubeなど動画の禁止

勉強の妨げになるものは極力控えて下さい。

特に動画は少しのつもりで見たにもかかわらず30分~1時間の時間が過ぎていて、その分集中して勉強する時間が減った…なんてことがざらにあります。

合格するためには、1日の勉強時間のうち30分~1時間の無駄遣いは致命傷と思います。

見ないようにしたほうが良いと思います。

ちなみに私の受験生時代は家にテレビがありませんでした…(テレビを捨ててアプリとブックマークを削除…浦島太郎状態になります…)

[9] 暗記した理論を忘れても気にしない

宿題の理論を暗記してミニテストで解答できる→素晴らしいです!

でも他の理論暗記したら忘れました→大丈夫です!

みんな忘れてます。

気にせずに与えられた宿題を迷わずにこなしていきましょう~

[10] 本試験の理論の出題形式と学習方法

試験のレベルと試験傾向を把握し照準を合わせて学習することにより合格する可能性が高くなると思いますので本試験の出題形式と合格答案を作成するために必要な学習方法を記しておきます。
理論を暗記しないと合格できないとの結論になるのですが・・・

さて、本試験の理論は問1と問2の2題での出題が続いており、その出題形式を大別すると次の通りとなります。

・個別理論
・応用理論
・事例問題その➀
・事例問題その②

また出題形式ごとの答案作成の指針と学習方法は次のとおりとなります。

⑴ 個別理論

個別理論とは、『相続税の納税義務者について説明しなさい。』であったり、『相続税の物納について説明しなさい。』のように、暗記した一つの理論を時間の許す限り解答する問題のことを指します。
この出題形式での合格答案は、ただひたすら暗記した理論を正確に速く解答する(通称ベタ書き)答案と思います。
また、合格答案を作成するために必要な学習は、理論を正確に暗記することになります。

⑵ 応用理論

応用理論とは、『相続人に対する規定について説明しなさい。』であったり、『障害者に対する規定について説明しなさい。』のように、『相続人』や『障害者』といったキーワードが関連する複数の理論を洗い出し、複数の理論の核となる部分(基本的にはその既定の[1]と申告要件)を解答する問題のことを指します。
この出題形式での合格答案は、キーワードが関連する理論を優先順位を考慮して解答する答案と思います。
また、合格答案を作成するために必要な学習は、理論を正確に暗記するとともにキーワードが関連する規定の範囲を暗記することとなります。

⑶ 事例問題その➀

事例問題その➀とは、令和2年の本試験の理論問題(『税理士試験 相続税法 本試験問題 令和2年』で検索すればヒットします。)のように、出題された事例に対する関連規定が一つまたは二つの規定など、その範囲が狭く、事例を説明しただけでは時間を持て余すため、対応する理論をベタ書きして答案作成をする事例問題のことを指します。
令和2年の本試験問題の問1では『小規模宅地等の特例』の規定に対する事例問題、問2では『低額譲受等』の規定に対する事例問題であり、関連する規定の範囲が狭い事例問題となり、各設問において事例に対する説明のみを行うと20分くらいで完答となり、時間が余るため、対応する理論をベタ書きすることとなります。
この出題形式で合格答案は、設問に対する正確な結論と端的な説明を解答することとともに、対応する規定をベタ書きする答案と思います。
また、合格答案を作成するために必要な学習は理論を正確に暗記するとともに、設問ごとに問われていることを正確に把握するために読解力をつけること、事例に基づく結論と説明文を作成するための文章力を身につけることとなります。

⑷ 事例問題その②

事例問題その②とは、令和4年の本試験の理論問題(『税理士試験 相続税法 本試験問題 令和4年』で検索すればヒットします。)のように、関連する規定の範囲が広く、かつ、理論問題の答案用紙の解答欄が少ないため、設問に対する正確な結論と端的な説明を解答する事例問題のことを指します。
令和4年の本試験問題の問1では、事例に基づき『子Aの相続税の計算上、課税価格に加算される財産の価額』と『子Aの相続税の計算上、課された贈与税の課税上の取り扱いについて』が問われており、その答案用紙は2枚と非常に少ないため、暗記した理論をベタ書きすると書ききれない問題となっております。
この出題形式での合格答案は、設問に対する正確な結論と端的な説明を複数作成する答案と思います。
また、合格答案を作成するために必要な学習は、解答範囲を絞り込むためには理論の正確な暗記が必要となるため、理論を暗記するとともに、設問ごとに問われていることを正確に把握するために読解力をつけること、事例に基づく結論と説明文を作成するための文章力(基本的にコピペ)を身につけることとなります。


理論の暗記は大変ですが暗記することで条文の理解につながると思います。(規定文を暗記することでベタ書きの問題のみならず事例問題も正解できます。)
一生ものの知識を身に付けるために暗記作業を本試験まで継続しましょう。
また、計算も忘れずに復習し、次の講義までに問題集を3回解いてください。
全部書き終えてから理論テキストの目次以降のページを確認したらほぼ同じ内容が書いてありました…
やはり教材は優秀だ…(理論学習の基本は2023年教材であれば理論テキストP7~8、P12~15、P23~24に事細かく記されていますのでそちらを読んでください。素晴らしい内容が記されています。その内容で疑問点や分からない点があれば教室で質問をして下さい。)

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この記事を書いた人

中込 雄一のアバター 中込 雄一 税理士

3児の父親で池袋で税理士をしています
最近はまっているのは娘の写真を撮ることとギターを弾くこと
元税理士受験の非常勤講師(相続税法)で元V系バンドマンです。

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