取引相場のない株式の純資産価額を計算する場合に、評価会社が被相続人甲の死亡により生命保険金等を取得し、かつ、遺族に対して死亡退職金及び弔慰金を支払い、保険差益が発生するときには、対応する法人税額等を評価会社の負債に計上しますが、算式だけを確認しても理解ができない部分だと思いますのでその内容を解説します。
[1] 計算方法
評価会社が生命保険金等を取得し、遺族に対して死亡退職金及び弔慰金を支払ったことに対応する所得金額を計算し、37%の税率を乗じて法人税額等を計算します
[2] 益金・損金の金額
益金・損金の金額は次の通り計算します。
⑴ 益金の金額
生命保険金等△保険積立金(保険積立金があればマイナス)
⑵ 損金の金額
➀ 損金とする金額
死亡退職金(問題で死亡退職金として与えられた金額。弔慰金として支給された金額のうち、形式基準を超える金額を含まない金額。)+弔慰金(弔慰金として支給された金額のうち、形式基準の範囲内の金額)
② 弔慰金の損金算入額の考え方
法人税法では損金の額に算入する弔慰金の具体的な計算方法は定められていませんが、相続税法の形式基準の範囲内の金額を損金とする判決(岡山地方裁判所 税務訴訟資料第259号-89(順号11202))や裁決(昭和51年04月26日裁決)があります。
したがって、問題上特段の指示がなければ、損金の額に算入する弔慰金の額は、形式基準の範囲内の金額とすることが一般的であると考えられます。
[3] 具体例
次の資料に基づき保険差益に対する法人税額等を計算しなさい。
⑴ 被相続人甲の死亡によりZ社の取得した生命保険金等 9,000万円
⑵ Z社が被相続人甲の遺族に支給した死亡退職金 5,000万円
⑶ Z社が被相続人甲の遺族に支給した弔慰金 500万円
⑷ 被相続人甲の死亡直前の月額給与の金額 50万円
⑸ 被相続人の死亡原因 非業務上の死亡
・保険差益に対する法人税額等
(9,000万円△5,000万円△50万円×6か月)=3,700万円(所得金額)
3,700万円×37%=1,369万円(保険差益に対する法人税額等)
・別表4の動き
会計上の純利益 3,500万円
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加算調整
過大弔慰金 200万円(500万円△50万円×6=200万円)
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所得金額 3,700万円
テキストにおいても解説がないため説明はしていませんが質問が多いため書いてみました。
忙しい・・・